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「因果応報」

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雨風の強い日に、姉は男に棄てられた。
玄関から直行した長いシャワーから出てきた彼女は、僕の目を見ながら云った。
「因果は巡るのよ」
そして、何十年も前を見るような遠い目をして、
「捨てるしかないものね、あのカサ、お気に入りだったのに」
と呟いた。

あ、そうすか。

「私ね、あなたとセックスとどっちが好きか考えたんだけど、どうもセックスの方が好きみたい。だって、あなたのことだけを考えようとして家を出ると、案外早い時間にあなたの楽しいところは思いつかなくなって、イヤなところとか、嫌いなところとかも考えるようになって、ああ今すれ違った男の子の方がいいかなぁ、なんて思うの。それで、今度はセックスのことだけを考えて家を出ると、また家に帰ってくるまでのあいだ、いろんな男の子とするセックスのことで頭がいっぱいのままでいられるの。あなたは忘れちゃうけど、セックスは忘れないでしょ。」